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近代化の精神性!?◆2 ひでぞう流・近代化論 その6
前回は近代化の精神あふれる「近代くん」と困ったちゃんの「ひでぞうくん」に登場してもらい、彼らの会社を舞台に近代化の精神性を見てみました。
今回はもう少し俯瞰して、その精神性や近代化の弊害などをお話しします。
近代化の弊害…
近代化によってもたらされる弊害を考えてみました。結構いろいろあるんです、これが。
手続き地獄
近代的な組織には煩雑極まりない手続きが待ってますが、ある程度の大きさの組織であれば、その手続きに従うのが結果的に最も効率的となります。
しかし小さな組織なのに手続きが煩雑すぎると本末転倒です。なのでその組織にあった加減が大切。だけど「手続きさせる意味」がわかっていない人が仕組みを作るとやみくもに手続きだらけになりがちです。
また、会社でも会議やルールが増えることがあってもそれらが減ることはありません。
こうして効率化を求めているのにどんどん非効率になっていく。…世の中にはこんな例がたくさんありますよね。
責任回避としてのシステム
「ワシ、ルール通りやったし、どうなろうと知らないもんねーw」…近代的な大組織では、一定の割合でこういうヤカラを生み出します。近代の仕組みは「システム通りに行うことが重要…」ですから間違っていませんが…、やっぱり間違ってます!
確かにルール通りにやるのは大切ですが、失敗が目に見えているのであれば話は別。システムを責任回避に使ってはいけません。
しかし個人を責めても問題の本質には迫れません。近代的な大組織では必然としてこういう人間を生み出してしまう…、これが近代化の弊害のひとつと言えます。
英雄的行為の否定
近代化の精神は「規格外」や「突出」を嫌います。標準化・規格化するのにそれらは邪魔でしかありません。
よって、そんななかにいると人間も型にはまってきます。だから型破りな英雄・ヒーローが出にくくなります。彼らは型破りだからこそ、ときにルールを飛び越えて活躍しますが、近代化の精神はルールや「組織」を重視します。よって、そういう「個人プレイ」が好きではありません。
近代的なものに冷たさを感じるとしたら、こういう部分に対してではないでしょうか?
「わかりやすい悪」がいない…
自分が今の世の中に不満を感じても「分かりやすい悪」がいないので、苦情の持ってきようが無い場合があります。
例えば中世ヨーロッパなら、農民から搾取して贅沢三昧の専制君主なんかが「わかりやすい悪」でした。
しかし近代社会に「わかりやすい悪」はいないのです。だけど生活は苦しいし社会不安もある。…そしてこの状況を明確に説明できないことで、更にいらだちが募ります。
たとえばブラック企業で働いて苦しむ社員がいるとします。その場合、経営者が「悪」だと思ったら、その経営者は株主から経営方針を厳しく追求されていた。では強欲な株主が悪かと言えば、株主は株主でリスクを取って株を買って経営者に要求を出しているだけなのです。株主の正当な権利として。こうなってくると、一概に誰が悪いとは言えません。
それでも、しいていうなら制度を作っている国が悪いと言えます。しかし「国」は我々国民ひとりひとりが構成員です。もっと言えば「国民主権」ですからね、日本は!
…こういう仕組みや複雑さで「いいようのない苦しみ」と「閉塞感」が発生します。近代社会に生きる我々は、時として怒りをぶつける相手すら分からないのですから。
単純に窮屈!
…これに尽きます。
これ以上の理屈はいりません。
ま、そういうことです。
近代は冷たいか…!?
近代化の精神、その悪い面ばかりを列挙しましたが、近代社会は面倒なルールばかりで冷たいだけなのか? そもそもなぜ近代化しなければならないのか?、…必然的にこういう疑問が出てきます。
しかし非近代的な社会、つまり呪術的・魔術的・恣意的・不合理な社会は多くの人間に多大な不幸をもたらします。
そして「非近代」が支配する社会でトクするのは本当に本当にホンのひと握りの人間だけです。
日本のような法治国家・近代国家でも既得権益と不平等はあります。しかしそれとは比較にならない不幸と超絶不平等が待っています。
手続き地獄で窮屈な近代的システム…、しかし誰に対しても分けへだてなく差別もしません。そして法に基づく恣意性の排除で「偉い人」の暴走も食い止める…。
あまりに当たり前なことですが、このシステムはスゴイことです。詳細に見れば近代は「むしろあたたかい」のです!
まとめ
大長編・近代論、ご精読お疲れさまでした。
前回は長かったし今回は途中でゲンナリしたと思いますが、最後は「近代はあたたかい」で締めておきました。
私は近代化バンザイ論者です。しかしウンザリすることもたくさんあります。特に社会人1年生のころは、そういう仕組みで世の中が回ってるとはツユ知らない「非近代人」だったので、さまざまな苦労をしたものです。
逆にいえば「これは近代が求める仕組みだから」と考えれば、少し気持ちが楽になります。
特に組織が大きくなるほど恣意性を排除しなければなりません。一見、冷たいシステム論ですが、そうしないと更なる混乱が待っています。ありきたりかも知れませんが、そんなことを考えてみると良いかも知れません。
さて、まとめです!
近代化の精神は、
- マニュアル化・規格化、そして「記憶」より「記録」だぞ!
- 「知る人ぞ知る文化」はダメだぞ!
- 全てに根拠(エビデンス)を求めるぞ!
- ミラクルより確率論!そしてプロセスや再現性を求めるぞ!
- 組織化、機械化、自動化してナンボだと考えるぞ!
しかし…、
- 近代化の弊害はたくさんあるぞ!
- だけど、非近代社会はそれを上回る多大な不幸があるぞ!
- あまりに当たり前で気付かないけど、近代社会はありがたいぞ!