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NHKスペシャル「老人漂流社会 親子共倒れを防げ」を見て
今、老人世代の経済的困窮=老後破産が増えています。
孤独な老人は年金以外に収入源が無く、先細りして破産します。しかしこのような事例はある意味、想像しやすいのですが、今回の特集では年老いた親が子どもと同居しているのに破産に追い込まれるという、ちょっと想像しづらいケースが紹介されています。
ナレーション:
「子どもと同居すれば、老後は安心出来る」かつて日本ではそう思われていました。しかし今、同居したことでますます破産状態に追い込まれてしまう、新たな老後破産が増えているのです。
なぜそうなるのでしょうか?
介護の為に仕事を辞めた息子、そして…
番組冒頭で紹介されたケースでは介護の為に仕事を辞めた息子が91歳の母親と同居します。当然、息子は仕事を辞めての同居ですから無収入です。そしてこの一家の収入は母親の年金8万円だけになります。最終的に母親は凍死、息子も亡くなってます。
月8万ではやりくり出来ない現実、そしてこの日本で凍死するという事実に暗澹たる気持ちになります。
働く世代の所得が減り続けている背景
バブル崩壊以降、働く世代の所得が減り続けています。15年前と比べ、年間所得は100万円ほど減少したデータがあります。また、非正規雇用も増加し、雇用全体の4割近くとなっている現実があります。
突然のリストラや、そもそも非正規雇用で安定した収入が無く経済的に自立出来ない子どもが親元に駆け込むカタチで同居しますが、家族で助け合って暮らせば安心というわけにいかない場合もあるのです。
市営住宅で暮らす80代の男性の事例はこうです。
その男性の40代の息子が失業したことで親子が同居しますが、年老いた親が受けていた生活保護が打ち切りになります。働ける息子と同居しているので保護は打ち切りというわけです。
確かに本当に困窮している世帯が他にあるのかも知れませんが、しかしこの事例を見る限り、この世帯だってギリギリです。
年老いた親の9万5千円の年金だけが頼りの状態で、ギリギリの生活が更にギリギリになり、追い詰められます。息子の再就職も厳しい状況です。
生活保護制度の欠陥!?
老齢の親と子どもが同居することで生活保護制度からこぼれ落ちてしまう…。
そもそも子どものほうも止むに止まれぬ状況、…それは自分の失業であったり老齢の親の面倒を見るために同居します。しかし生活保護制度的には「子どもが同居しているのだから、親を養うことが出来る」と見なされ、保護が廃止になってしまうのです。
生活保護は困窮している順に支給されるべきなので、ある意味それは正しいかも知れません。しかしこれらの事例を(テレビ越しとはいえ)見る限り「こっちも困窮しているよ」と言いたくなります。
ただ、これに対して何の手段も無いかというと、そうでもありません。「世帯分離」と言って、親と子の世帯を分離する方法があります。親が高齢者施設などに入居することで生活保護受給が可能になるのです。
しかし家族が離れ離れになって暮らすことに葛藤があります。そりゃそうです、親子だからそれを辛いと感じて当たり前です。
なので役所からの世帯分離提案を断って、ますます困窮する家庭もあるだろうと想像します。
幸い、と言っていいのか分かりませんが、この番組内で世帯分離を提案された親子はそれを受け入れていました…。
今後の社会はどうなるか!?
総務省、統計研修所の担当者は「5~10年で親子共倒れ(この番組で言うところの老後破産)が大量発生する可能性がある」と言っています。
この状況に対して社会学者は「支援にお金を出し惜しみしないことが長期的に見れば社会を健全にする」と言います。
これに諸手を挙げて賛成したいところですが、財源の問題もあれば別の世代の問題、以前お話しした子どもの貧困問題もあります。
参考記事:
今や6人に1人! 衝撃的な「子どもの貧困」を考えてみる!
では財源を確保するために今まで以上に経済成長に邁進を…、と言っても限界があります。
それはそれで過労死などの問題が更に加速する恐れがあるからです。本当に難しい問題だと思います。
ひでぞうのまとめ
NHKスペシャル「老人漂流社会 親子共倒れを防げ」、本当に重い内容でした。
貧困はカタチを変えながら様々な世代に襲いかかります。
子ども、老人、リストラされやすい40代以上の世代…。
また若者も正社員になれない可能性を考えればこの世代も安全ではありません。
この番組を見て、あまりの重さと問題の難しさに「まとめ」と言いながら何かまとめられるわけではないのですが、忘れないうちに内容を書いておきたいと思い記事にしました。
◆2015年9月3日・追記:
電車内の吊り広告…、奇しくも新潮と文春が特集してます。